ぼくらがルワンダに旅に出る理由

セクションナインの吉田真吾@yoshidashingo)です。

先週1週間ルワンダにいました。赤道に近い場所ですが、最高気温は25℃くらいで東京にいるのと変わらずかなり快適でした。名残惜しい気持ちながら帰りの機内でこのエントリーを書いてます。

見聞きしたことはその場ですべてツイートしておいたので、本文と合わせてTwitterやInstagramを掲載してレポートとしてまとめます。少し長くなりますがご容赦ください。

togetter.com

ルワンダ共和国の基本情報

ルワンダは東アフリカに位置し、ウガンダやタンザニア、ブルンジ、コンゴに囲まれた四国より少し広い程度の小国です。

アフリカ諸国で経済成長率が高い国はかなり多いのですが、ルワンダも2000年からビジョン2020という成長プランを実現するために建設需要などを主軸に毎年8%程度成長をしています。

ecodb.net

現在3期目を務めるポール・カガメ大統領の圧倒的な支持率を基盤にした優しい独裁がうまく機能しており、今後はICT人材やIT産業の発展などによりアフリカ大陸におけるシンガポールのような国になっていくことが予想されます。

めっちゃ金ありそうに見えるでしょ?ルワンダでもっとも高額な5000RFWで構成してこれでざっくり2万円分くらいなの。

参加経緯

昨年WIRED Japan誌で「アフリカ特集」というのがありました。南アからルワンダやケニアにかけて複数の文化やスタートアップの紹介がされていました。

wired.jp

その中でひときわ目を引いたのがZiplineです。

wired.jp

ドローンを用いて社会問題を鮮やかに解決しようとしていることを知り、この国ではどうやってこれら発展途上の技術をテコにしたスタートアップと法律や許認可などをマネジメントしてるのだろうかと。

それに、そもそも自分の中でITについてはまったく白地図であったアフリカ大陸で、しかも近年虐殺の動乱がをあったらしい国で、そんな発展したITのエコシステムが存在しているなら直接確かめに行くしかない、というのが今回の旅につながったモチベーションだったのです。

その後、知り合いであるスタジオアルカナの吉田さんがすでにルワンダのITスタートアップツアーに参加していることを知り、直接話を聞きに伺わせてもらいました。ツアーで回るか有志で適当に回るかは結構ながい間悩みましたが、早めにレックスバートさん主催の3回目のツアーが敢行されるようだったのでそちらに参加させてもらいました。

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ちなみにあとで知ったことですが、Ziplineは本プロジェクトのドローンの飛行許可を保健局で取得管理してもらっているそうです。ドローンを飛ばしたい場合はその目的により管轄が異なる点が日本と違う点ですね。

IT視察

今回特徴的だったのは、時期的にTransform Africa Summit 2018というイベントに参加することで、日本からJICAやサムライインキュベートの人など、こういう機会じゃなければ会わなさそうな人がどうこの国に対して取り組んでるかということを間近で見られて話を聞けた点です(単に現地のITエンジニアとの交流という以外に)

Datahack

TASの前に若手中心で周辺の東アフリカ諸国の「金融」関連の社会問題を解決しようとしているスタートアップによるピッチコンテストの2日目に参加しました。

Transform Africa Summit 2018

スタートアップ系やブロックチェーン関連のカンファレンスに参加しました。スタートアップピッチイベントは3つありました。

Face the Gorilla

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250 Startup

Miss Geek Africa in Smart Africa Women Summit

女性の起業家のピッチイベントで、コンペ自体は朝イチで開催され(動画あり)、表彰のみ。でしたがイベントの最後を締めくくる話題にこういうのを持ってくるあたり意識が進んでるなと感じました。

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ざっくりしたスタートアップピッチ全体の感想としては今回参加したいずれもブレイクスルーという感じではなく、課題感が小粒だったり単なるタイムマシン経営だったりというのしかありませんでしたが、こういった取り組みを続けることで少しづつ社会問題が解決されていくことを願ってます。

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スタートアップブリーフィング

ツアー参加者の希望で複数の会社さんに伺ったり、ホテル内の会場に来ていただき事業内容や技術的なブリーフィングをさせてもらいました。おそらく今回もっとも面白かった機会でした。特に印象に残った数社だけ紹介します。

WiredIn

受託開発の会社で今回のツアーを主催したレックスバートさんと提携している会社です。6名ほどのエンジニアが現在主に日本のクライアントの仕事について1人1つないし2つ掛け持って担当してるとのことで、プロジェクトごとにコミュニケーション方法や開発手法など違うことが多いにもかかわらず特にそれがストレスになっているようなこともなく、また、顧客の要求仕様が曖昧なポイントなどもしっかりキャッチアップし実装しているということで、かなり地力が強いエンジニアが多い(むしろ若干ここにいるのはもったいないんじゃないかってくらい)ように感じました。

また、自社サービスとして、「ReBrain」というサービスの紹介もありました。この国は成長途上であるため、どうしても優秀な国内の才能が機会や収入を求めて他国に行ってしまい、自国のエコシステムの成熟に還元されないという「Brain Drain」が課題だそうで。これを解決するためにWorkplaceのようなSNSベースで自国の課題にアドバイザリなどで貢献することができるプラットフォームを開始しているそうです。

Yegomoto

キガリ市内には車のタクシーよりもバイクタクシーのほうがたくさん走っています。車は車両が高い(ハイヤーでも自分で車両が持てず組合で仕事も車両も共有して調達したりしているのが一般的)ことや、ガソリン価格が高いこと、市内は朝夕のラッシュがものすごいことなどの要因が考えられますが、彼らは運賃メーターを持ってないただのバイクなので、毎回の運賃交渉がドンブリ(ドンブリなのは車のタクシーもそうですけど)で非常に不透明なんですね、不透明というか気分。さらには運転手も市民も道をびっくりするくらい知らない(なぜだ笑)ため、ガンガン間違える。ハイヤーでさえ間違える。ということでこういった課題を解決してくれるのがYegomotoです。

ドライバーのプロフィールや車両情報を管理し、車両につけたオリジナルのGPS/NFC決済端末にドライバーがログインして利用することで、明朗会計かつキャッシュレスで利用できる大変便利なもので、近くルワンダ中のバイクタクシーすべてに導入されることが決まっているそうです。

こういったスタートアップにもう一社SafeMotoというのがあるそうで、彼らはバイクタクシーによくある事故(ガンガンすり抜けるしほとんど信号がないのでガンガン事故るらしい)を減らすソリューションを主体にしたバイクタクシー向けサービスなんだそうですが、政治力で負けてしまったのかYegomotoの全面導入でなかなか苦境に立たされているという現状だそうです。

Yegomotoのオフィスで諸々の仕組み聞いてきた。

まだ台数の少ないYegomoto、次くるときはこれだけになってるかも

kLab & FabLab

スタートアップの聖地のような触れ込みだったので行ってみましたがいわゆる普通のインキュベートスペース/コワーキングスペースという感じでした。しっかりしたコミュニティマネージャーのような人はいないようで、起業系イベントは多いけど開発者のミートアップイベントはあまりやっていないそうです。

開発者コミュニティがここらへんにあるんじゃないかと思っていたのですが、そもそもそういうコミュニティはなく、リッチになってアーリーリタイアしたいという方向の人が多いそう。いずれにしても現在はまだ衣食住のためにとにかくサバイブしているという状況らしいです。

WiredInでもこちらでもオープンソースにコントリビュートするような考え方がまだないようでした。

その他

地元の小学校の話

昼間は全員で車移動が多いため街の感覚をつかもうと朝散歩してみました。車でよく通る道を外れて坂を下って行くと地元の人しか歩いてないのですが、子供たちの声が聞こえて何気なく半開きの門から中をみてみるとたくさんの子供たちがおり、どうやら小学校のようでした。ちょっとだけ中を見て良いか門番に尋ねると中のオフィスにいる校長先生に尋ねてくれとのこと。中に校長がいなかったので少し待っていると、グラウンドのほうから満面の笑みで校長が上がってきて、案内してあげるから是非好きなだけ見て行ってくれと迎えてくれました。

どうやらこの公立学校は幼稚園(3年間)と小学校(6年間)が合体しているものらしく、全体で480人の子供たちがいるとのこと。母語はほとんどがキニヤルワンダ語ですがカリキュラムは3歳からフランス語がはじまり、6歳からは英語になるそうで、この国の人間の言語能力の高さ(4ヶ国語すべて話せる人も意外と多い)の根幹を担っています。

非常に人懐っこくておはようって挨拶をすると100%返してくれるし、小さい子はすぐ寄ってきて触ってきたり手をつないできたりするのですが、8歳くらいを境に本音を表に出さないように教育されるようになってどんどんシャイというか暗い性格になっていくみたいです。たしかに大きい子ほど積極的に話しかけてくることが少なかったですが挨拶は必ず返してくれてとても素直な人たちだと感心しました。

アカゲラ国立公園

最終日前日は朝5:00に出発して夕方までアカゲラ国立公園を回ってきました。キリンの交尾を間近で見られたことがハイライトでした。9割オス同士らしいんですけど。

国民性について

ケニアや西アフリカ諸国に比べて牧歌的で洗練されていない印象があるので、せっかちな人やプロとはかくあるべきと考えてる人などはイライラしやすいかもしれません。あとナチュラルにワキガの人が多くて割と街中ではツラいです。

ジェノサイドのこと

1994年に発生したジェノサイドは当時の報道や現在の通説、ジェノサイドメモリアルの構成、またWikipediaひとつとっても、フツ族(国民の9割を占める背がさほど高くない特徴の民族)がツチ族(国民の1割程度の背が高いことが特徴の民族)を虐殺し始めたことに対して愛国戦線が救済者として制圧を行なったというのが通説になっています。

これは誤りで、亡命ツチ族とウガンダの軍部がツチ族の政治的な主導権の奪回のために愛国戦線として、それを支持する西側大国による武器の供給を受けて大統領暗殺およびその後の侵略行為をして互いに虐殺しあったというのが正しい歴史観であり、ルワンダ中央銀行総裁日記の改定増補で加わった「ルワンダ動乱は正しく伝わっているか」を読むのがもっとも良いでしょう。

カナダ人ジャーナリストが20年以上追い続けて裏づけを行なった「ダブル・ジェノサイド」という書籍も発売になったそうです。

また、ジェノサイドメモリアルですがプロパガンダに沿った構成をしているという点を差し引いても当時の資料や骨、子供達の写真と彼らの死因などが掲載されており一度は見て追いたほうが良いだろうなとは感じました。

ただし隣人だからといって絶対に信じることはできないといったトラウマを持っている人や、実際に40代以上であればマチェット(短刀)で実際に当時誰かを殺したことがある人が相当の割合でいるはずなので、相当中が良い関係になっても生半可な興味本位では話題に出さないほうが良いでしょう。

ということで視察レポートでした。いちおオフショアや人材採用などのビジネスにはつなげていく予定。皆さんも行ってみると良いですよ