近況報告と2024年の仕事について

吉田真吾@yoshidashingo)です。

2024年、明けましておめでとうございます。

株式会社サイダスの取締役CTOを辞任しました

2023年12月25日に開催された臨時取締役会および臨時株主総会において、当日付での辞任について承認いただきました。 2024年3月末まではICという立場でセクションナインとして業務支援を実施します。

2016年末にセクションナインとして支援を開始してから丸7年経ち、わたしが立ち上げたたくさんのチームも十分に自走し、後継のCTOも頼れる人に託せることになったため、次のチャレンジに向かう決心をしました。

2023年に片手間ながらも、生成AIを使ったFAQ機能や人材検索機能がリリースできたことは一安心でした。ほんとうはまだまだ生成AIを活用した機能開発のバックログは積み上がってるので、有望ないくつかはベータでもリリースしておきたいところですが、3月までは主業務のほうが忙しいので、これは間に合えばという形になりそうです。

サイダスでのキャリアでも面白かったのは2022年にたまたま管掌役員がいなかったために、営業本部長も兼務(実質、営業側に専念)したことでしょうか。おもに中堅・中小企業向けの販売について、バリュープロポジションを絞り込んで言語化・資料化、あちこちのリストを精査して架電の管理から見込み化、商談化率の改善、そしてそれらをKPI化して月末の締め日直前に達成!のような地道だが確実な営業プロセスの積み上げを毎月やっており、それはそれは楽しい仕事でした。また、これらのSLG側の仕組みにとどまらず、CSからモヤモヤとした解像度で上がってくる大量の要望を整理して、磨いて、製品のエンハンス開発のバックログに向かってアラインをするというPLG側の活動も、それまでよりくっきりと情報や役割の流れ、各活動の詳細、そしてそこで関わるユーザー、CS、開発者の心の機微まで理解できたことがとても満足度の高い活動になりました。

とくにそれまでは周囲にエンジニアしかいない環境で働いていたものが、事業会社において非IT人材をマネジメントする機会に恵まれたことが経験としてとても良かったと感じています。

LLMアプリケーション開発の現状について

さて、次の仕事ですが、まだ決めていません。昨年LangChainの書籍を執筆して大変好評なことからも、LLMアプリケーション開発が2024年に山場を迎える実感はあります。

2023年は、ベクタライズした文書データに類似検索をおこなって知識を取り出す「RAG」が大流行したので、今年もさらにUXや精度が向上していくでしょう。とはいえこのユースケースの場合、なかなか1回のトランザクションに対してユーザーが支払える価値を高くすることは難しそうです。社内、といっても今やSaaSやオンラインストレージやクラウド上のDBにまたがってしまっているデータをできる限り網羅的に、かつ低コストにインデックスして使えるようにする方法が課題になってくるでしょう。

RAGのようなタスク単位での活用に加えて、2024年、より注目されるのが「AIエージェント」です。去年の春には登場していたツールですが、一度大きな幻滅期を経て過度な期待を振り落としたうえ、RAGで得た「よりトランザクション価値の高い一連の業務への生成AIへの適用需要」が新たに加わり、一歩一歩アプリケーション開発の現場に浸透していくことでしょう。たとえば、Step Functionsのような固定的なオーケストレーターの一部のタスクとして生成AIが利用されたり、検索工程や関数の選別といった部分的なオーケストレーション工程の推論ステップ自体をエージェント(ないしFunction callingなど)で実現したりしながら、「(完全AIエージェントではないが)まずは十分に役にたつ」AIエージェントが実装されていくことになります。

とくに投資対効果の見えやすい、PRや営業工程をまるっと補佐してくれるAIエージェントが主戦場になる日も近いはずです。

それらのタスクの中にはマルチモーダルなLLMアプリ(それをもはや大規模"言語"モデルと言い続けるのかも微妙ですが)も組み込まれるでしょう。

また、動画生成、AITuber方面の進化も、データセットの進化や量子化などが進み、本格的に性癖ズドンな再現力が確保されそう(ご家庭の○○だけで○○できる)ですので、芸術・文化レベルでの混乱、AIキャバクラの登場など荒々しい状況がさらに続くことが想定されます。

そうなってくると当然、自分自身のキャリアもその中のどこかにフルコミット、という思いも強くありながら、ちゃんと今までのキャリアを活かして高い価値の成果もじゃんじゃんデリバリーしていける「今もってるアセット + これからの未来を作るチャレンジ」の掛け合わせのバランスの良いポジションを見つけないとなと考えているのが現状です。

生涯初の職務経歴書を作成しました

そこで(当然の流れではあるが)職務経歴書をちゃんと作ってみました。初めて作ってみて感じたのは、自己認識では「いつも目の前のことをやってきただけなんだけど、はたしてなにか手元に残ってるんだっけな」という感覚が、一続きのストーリーにカチッとまとまる感覚でした。おそらくこういうのを「編集の魔法」というのだろうなと案じました。(もちろん本当のことしか書いてないにも関わらず)

サイダスでは500名くらい面接をしており、職務経歴書でいえばおそらく1000名強のものを見てきたと思うのですが、自分のキャリアについて言えば採用面接というものに無縁で過ごしてきており、一度もまとめたことがありませんでした。たとえばざっくり以下のような感じです。

  • 高3から転売業で生計を立てていた。
  • 思い直して大学は行ってみた。
  • 社会人1社目は公衆電話のイエローページに掲載されてたところに電話して、即日面接、翌日入社。
  • すぐに子どもができてフリーランスになった。
  • コミュニティで誘われ、クラウドSIerに入った。
  • 自分の会社を作った。
  • 支援先に誘われ、HR Tech企業に入った。

行きあたりばったりなキャリア、書ききれないほどたくさんのエピソードをじっくり観察し、大胆に取捨選択し、端的に編集し、1人の職業人生のストーリーを作る、職務経歴書って結構「アート」だなと感じました。

ご興味あれば(当然それなりの求人があったうえで、ですが)、TwitterかLinkedInあたりでお問い合わせいただき、ご笑覧ください。

人事戦略、HR Tech周辺のこれから(予告)

さて、以上の流れから、おそらく今後も「経営またはそれに準ずる仕事」あるいは「それらの知見を価値として顧客に提供する」なにかの仕事をすることにはなると思うんですね。そうなると今後、「事業の中核たるヒトをどのように活躍させ、企業利益を最大化するべきか」について、自分がどういった考えかたを下敷きにしていきたいのか。また、向こう数年で深掘りしたい分野や業務、仕組みをどこらへんと位置付けるか。が重要なのですが、長くなってしまったので今日はここまでにして、次回以降書いていくことにしたいと思います。