JeffConf HamburgでOne Communityを感じてきた

セクションナイン吉田真吾@yoshidashingo)です。

2018.2.15,16の2日間、ハンブルクで開催されたJeffConf Hamburgのカンファレンス(16日開催)に参加してきました。ロンドン、ミラノに続く3回目のJeffConf、かつ最後のJeffConfでした。

Guten Morgen, Hamburg!! #jeffconf

Togetterまとめ

togetter.com

What is "Jeff" ?

さて、JeffConfって何をカンファレンスするのだと疑問に感じた人もいるかもしれません。逆にわかってる人はちょっとしたサーバーレス事情通ですね。

サーバーレスがバズワードになって騒がれていた当初、こんな記事をPaul Johnstonが書きました。

serverless.zone

ちなみに彼は現在AWSのシニア・デベロッパー・アドボケイトになり、今回のJeffConfもその立場として講演をしていました。

コンテナ上のFaaSはサーバーレスか

で、ちょっと目を引くエントリーを彼のMediumから見つけたので紹介。fissionやkubeless、またOSSのFaaS(OpenWhiskやOpenFaaS、fnあたり)はサーバーレスかという話題ですね。彼の意見としては「管理しなければいけない」という時点で矛盾しているとのこと。

hackernoon.com

私も同様に、サーバーレスはITサーマネの中でのパラダイムシフト、つまり機能性に限らず非機能性についてカバーされており、その点を議論の対象範囲として常にしておく必要があるという点で違うかなと思っています。たとえば、Lambdaが使いにくいなら自分でFaaSソフトウェアをローカルやAWS上にホストしちゃえばいいじゃんというのは、スケーラビリティ管理やエラー時のふるまいの実装などの非機能性を考慮しないことになってしまうので、サービスマネジメントの見地からすると片手落ちだよね、という話です。当然FaaSもそれを実現するソフトウェアも中身は同じ(たとえばOpenWhiskはFaaSソフトウェア、それをサービス提供しているのがIBM Cloud Functions)ですので、機能性に関する議論はどしどしやるべきですけどね。

ここらへんの話は4月あたりにコンテナ系のイベントのトピックの1つで話すかもしれません。(Observabilityの話のほうがメインになると思いますけど)

Code of Conduct の事前説明

本編始まる前ですが、運営メンバーがCode of Conductに関する説明、つまりどのようなことをしてはいけないか、不快な出来事に遭遇したら誰に伝えれば良いか、どこにメールすれば良いかなどをきっちりと説明していました。これによってみんなで快適に過ごせるように努めていこうという空気感になったので、自分のオーガナイズするものでも取り入れて行きたいなと思った次第です。

The Road to Serverless Days

  • 2016年にAnt Stanleyによって生み出されて成功したServerlessconfですが、彼が独立したあとに自身で始めたServerlessconfのオルタナティブなカンファレンスがJeffConfです。

Ant Stanley!!

  • イベントでこだわっているメッセージ性「One Day, One Track, One Community」、また、華美な実装をせず協会や美術館といったレガシーを活用した低予算、手弁当での運営というのが特徴ですが、箱物の質素さに比べて、CoCの実践(実際に不快なツイートは直接削除要請などしていた)や、セッション間のコミュニケーションの促進など、快適で知見の共有に本質的な場づくりにこだわっているなと感じました。実際お昼ご飯を食べながらServerless, inc. のメンバーとEvent Gatewayに関するディスカッションなどができたのは非常に良かったです。
  • スポンサーはブースなどをしっかり構えられる印象ではないので、商業的なメリットについては多く望めない(オーガナイザーとしてこのバランスをどうとらえるべきかは難しい)とは思いました。
  • JeffConfは今回のHamburg開催を最後に、今後はServerless Daysに名称変更して開催されます。初回は今年の7月にロンドンで開催されることがアナウンスされています。Antに聞いたら、ワークショップが3日間、カンファレンスが1日というラーニングイベントになるようです。
  • 実は2016年にNYCでサーバーレス周辺の文脈の広がりに衝撃を受けて即日東京開催のライセンスの会話をAntとして以来、1年半以上ぶりに会ったので感慨深かったです。

Malwineのグラレコとともに送るセッションスライド&ツイート

RubyGirlで日本の漫画・アニメが大好きなMalwineがセッションのグラレコを担当していました。登壇者にも参加者にも大好評だったので、これとともにセッションスライドを並べておきます。

Why the fuss about serverless

www.slideshare.net

長年IT業界を見てきた@swardleyさんにおけるIT組織戦略、本物のCEOがやるべき仕事の話。

medium.com

戦略がよくわからないCEOは以下の文言を自社の戦略として掲げると耳障りが良い(中身はないけど)ので自由に使ってね、というのもなかなか皮肉が効いてて面白かったです。

What is my Strategy?

blog.gardeviance.org

You shall not FaaS

speakerdeck.com

Real-Time Serverless Back Ends with GraphQL

speakerdeck.com

Using the Event Gateway To Build Multi-Cloud Serverless Applications

www.slideshare.net

Serverless Data Warehousing & Data Analysis on AWS

speakerdeck.com

Serverless in production, an experience report (JeffConf)

www.slideshare.net

How to Sell Serverless to Your Colleagues

www.slideshare.net

Serverless Gotchas

docs.google.com

Putting the F in FaaS

speakerdeck.com

Intro to Fn in 10 Minutes

speakerdeck.com

Serverless Machine Learning

Serverless Machine Learning

その他 (スライドはまだ上がってなさそう)

ハンブルク観光

  • Westin Hamburgに泊まったんですが、ここ自体がハンブルクにおける観光名所になっているみたいで、とても賑わっていました。

土曜の朝だからか静か

  • Westinのすぐ隣が倉庫街で、またLove padlocks(愛の南京錠)などもあり、観光はしやすかったです。

倉庫街だね

いたるところに錠前がかけてあるのなんなんだろ

別の橋にも錠前が

  • 今回現地の人におすすめの観光地を聞いたらレイパーバンとかフィッシュマーケットを勧められたんですがいずれも時間帯が合わず、倉庫街の一角にあるミニチュアワンダーランドにだけ行ってきました。結果、これが大正解でした。広大な倉庫内の3Fと4Fにさまざまな名所がミニチュアで再現されていましたが、とにかく造形が細かい、かつ広い。2時間ではすべて回りきれなかったので今度はまだ子供が小さいうちに家族で遊びに来たいなと思いました。

家族連れが多くてまだまだ待ちそう

こまかいなぁ

https://www.instagram.com/p/BfTPnkqBtK-/

https://www.instagram.com/p/BfTPqK-BU57/

https://www.instagram.com/p/BfTPum7hqNh/

https://www.instagram.com/p/BfTP5GZB6rB/

https://www.instagram.com/p/BfTQGcpBc3W/

https://www.instagram.com/p/BfTQRqNhbFB/

https://www.instagram.com/p/BfTQbJsBZtu/

Westin Hamburgのフィルハーモニーセンターもあった

ミニチュアワンダーランドとにかく広かった

ここも圧巻の広さ&奥行きだった

Pixel 2 と Project fi について

  • 今回パリとハンブルクを短時間で周らないといけないのでモバイル回線どうしようかと思い、Project fiを使いたくひさしぶりにAndroid機であるPixel2を買いました。普段はiPhone/iPad/Macが主体なので接続性がよくないかなと心配してましたが、実際さほどMacとは良くないんですがそれ以上のアドバンテージがいくつかありました。
  • Pixel2にeSIMとして搭載されるProject fiは、通常のnanoSIMと切り替えて使うことができるので、海外に着いたらProject fiに切り替えて普段使いとのギャップなく快適に利用できます。ハンブルクで一部LTEが有効にならないときがありましたが、海外どこに行っても回線に困らないのは本当に快適です。アメリカの電話番号から電話もできますし、ほとんどのローミング可能な事業者でさえ対応していないルワンダあたりもカバーしてますしね。
  • 普段はiPhoneXのカメラで写真を撮ることが多いですが、Pixel 2のほうがきれいな写真が撮れるなと感じました。上記のインスタ画像、ミニチュアワンダーランドの外観や南京錠(いっぱいかかってるほう)が少し白く飛んでますが、それがiPhoneXで、それ以外はほぼPixel2だったと思います。

Serverlessconf Parisに行ってObservabilityについて考えた

セクションナイン吉田真吾@yoshidashingo)です。

2018.2.14,15の2日間、パリで開催されたServerlessconf Parisに参加してきました。今回のパリ開催は東京を私がオーガナイズしているのと同様、D2SIというパリのコンサルタンシーが行うフランチャイズ形式で行われました。

http://paris.serverlessconf.ioparis.serverlessconf.io

Togetterまとめ

togetter.com

Observavility

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1本目はヤンさんのObservavility に関するトラックでした。Observavilityはマイクロサービス界隈を中心に重要なトピックになっており、さらにサーバーレス界隈でも、複雑化するピタゴラスイッチを分散トレーシングするサービスやツールが増えてきてることから注目度が上がっているため興味深い内容でした。 昨年、東京のカンファレンスにも参加してくれた Espagon や、DataDog らもブースを構えておりプロモーションを頑張っていました。

www.slideshare.net

blog.d2-si.fr

Observabilityについて書かれた記事の初出はこのTwitterの記事あたりでしょうか。Twitterをモノリシックから分散アーキテクチャに変更したことで、システム間の複雑性が上がったため、複数のサービスにまたがる処理において発生した問題の原因箇所の特定のための可視性の担保が重要だったという話で、実際にどうメトリクスを収集したか、可視化したか、モニタリングしてアラートしたかといった内容が書かれています。

blog.twitter.com

2013年に続き2016年にも。

blog.twitter.com

時は流れてマイクロサービスアーキテクチャが普及してきた昨今、単一システムごとのメトリックをダッシュボードに並べてもシステム全体が見えないモニタリングのしにくさ、障害検知したすべてのノードからのアラート地獄、分散環境内での根本原因箇所の特定の難しさ、セントラライズされずに散らかったログなど、モノリシックなシステムにはなかった課題を解決する必要があり、まさにObservabilityが課題となっておりますが、当初はMonitoringの文脈の上位概念だったObservabilityが、これらの課題を解決するための「モニタリング」「スマートなアラート、ダッシュボード」「分散環境上でのトレーサビリティ、障害検知」「ログ収集、分析」といった、オペレーションに必要なすべての要素の上位概念として最近では位置付けられているみたいです。

  • Monitoring
  • Alerting/visualization
  • Distributed systems tracing infrastructure
  • Log aggregation/analytics

medium.com

OSSの分散トレーシングツールもちまたにたくさんあります。

github.com github.com github.com

さて、サーバーレスで構築されたマイクロサービスにおいては、サービス間のトラフィックモニターや、障害箇所の特定のしやすい可視化ダッシュボードや、スマートなアラートシステム以外に、FaaS独特の課題を解決するためのトレースも必要になります。たとえば、Lambdaのイベント連携のトレースができる AWS X-Ray などもそうですが、現在X-Rayは非同期呼び出しの場合の連携先まではトレースされません。Espagonなどはこれらに対応してると口頭で聞いてますが、どうやってるかなどは企業秘密だそうで、いずれにしても「サーバーレス」で「非同期」な「分散環境」をトレースする方法は、システムをどう可視化して保守したいかによって、複数の選択肢の中から組み合わせて実現するのが現在のベストプラクティスみたいです。

※いちおこんなやり方はできそう↓ qiita.com

ということで Charity Majors さんもこんな感じで語っているとおり、サーバーレスな分散システムには、そのシステムのアーキテクチャ自体がモノリシックから大幅に流儀の違う形に変更したように、モニタリングやトレース、ロギングについても大幅なアップデートを行い、Observabilityを確保する必要がありますね。

blog.intercom.com

speakerdeck.com

CNCFのホワイトペーパー

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また、CNCFのServerless WGから発行されたホワイトペーパーについての話も前評判の割には面白かったです。内容について歯切れは悪いですが網羅的に今までのサーバーレスの話題が記載されてはいるかなと(斜め読みしかしてませんが)。ただし、海外ではサーバーレス界隈の人の間ではまったく話題になってません。なんでだろうなと思ったんですが、おそらくもうここ周辺の話題(定義とか歴史的経緯とか)に完全に食傷気味なのと、CNCFの標準化に向けたイニシアティブをどう扱ったらいいものか対応し兼ねてるということなのかなと。たしかにもう2年やってますからね、こういう話。

https://github.com/cncf/wg-serverless/blob/master/whitepaper/README.mdgithub.com

www.publickey1.jp

Accelerating DevOps with Serverless

俺らの@ijinさん。

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youtu.be

その他

Randallがライブコーディングしたり、nuclioが結構インテリジェントエッジの部分にフォーカスして十分なソリューションになっていたり、RyanがSpaceXとサーバーレスの小話で最後〆てたり、結構面白かったです。

blog.d2-si.fr

次回開催のことなど

  • 次回は5月に「BINARIS」が運営母体で「テルアビブ(イスラエル)」で開催されるそうです。
  • 東京も今年も9月か10月に開催予定です。準備頑張ります。

パリについてのメモとか

  • 今回は滞在が24時間以内ということで、エッフェル塔も凱旋門も回れずでした。6月あたりが最高のシーズンらしいので、また6月に来てシェイクスピアアンドカンパニーとかちゃんと観光で寄ってみようと思います。
  • カンファレンス会場であるEspace Saint Martinと同じブロックにある レバンパリ という、ニューヨークのAce Hotelを2段階くらい高級にした感じのホテルに泊まったのですが、設備はAce Hotelそっくりで派手ではないのですが、シャンプー、石鹸、コロンにいたるまで最高に自分に合うもので、またパリに行く機会があれば毎回あそこがいいなと思うくらい良かったです。もし行く人がいれば参考にしてください。
  • メシは何を食べても美味かった。
  • Amex使えないところ多かった。

Nuit à Paris

Alexa Day 2018でVUXデザイナーやカスタムスキルのつくりかたの話をしてきた #alexaday2018 #jawsug

セクションナイン吉田真吾@yoshidashingo)です。

2/11(日)に開催されたAlexa Day 2018でVUXデザイナーのことやサーバーレスの話、Lambdaで対話モデルを実装する方法などについて話をしてきました。

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www.slideshare.net

今年に入ってからカスタムスキルをデモする機会が増えており、ちょうどいいタイミングでした。実装方法の説明についてはエコちっちのデモをベースにしました。

↓↓↓デモが失敗した場合に備えて前室で録画しておいたもの↓↓↓

youtu.be

1つだけポイントを挙げるとすれば「ステート」です。動画の中で3回エコちっちのコマンドを実行してますが、1回目は初期化、2回目はコマンド指示、3回目は状態確認コマンドからのコマンド指示であることです。これを実現するために必要なのが「ステート」です。

エコちっちとの対話は比較的単純なほうですが、このレベルでさえ心地よい対話フローを実現するためにはそれなりに事前に対話フローの設計が必要で、うちでもVUXデザイナーを育て始めています。新しい職業が生まれてるわけですからね。とてもエキサイティングな瞬間だなと感じてます。

あと、こんな感じでGUIで定義するフローからデプロイできるようなツールがあるといいなと考えています。

また、懇親会ではDJさせていただきました。djay + Beatpad、優秀。

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※金春さん、写真ありがとうございました。