IIJ GIO にあって AWS にない(なさそうに見える)10のサービス

国内 IaaS ベンダのシェア

富士キメラ総研によると、以下のように2011,2012年、国内の IaaS 市場において IIJ GIO がトップシェアとのことです。

IIJのクラウドサービスが国内パブリッククラウド市場において2年連続でナンバーワンシェアを獲得 | 2013年 | IIJ

同社のレポートによると2013年もIIJがトップシェア(AWSは2位)と予測しているが、同レポートの昨年分の予測を見ると予測売上金額が大きくハズれてるので参考程度にしときたいと思います。私個人の予測としては、2013/10現在、AWSがすでに国内トップシェアになっていると思われます(中の人は当然教えてくれないんですけど)。

まあどちらがトップかというのが本題ではないので置いときます。

 

IIJ GIO にあって AWS にないサービスを列挙してみる

いずれにしても日本でのビジネスの老舗である IIJ。国内需要にサービスを当て込むという点では当然一日の長があるでしょう。ということで、IIJ GIO が展開しているサービスメニューを見て、AWSやパートナービジネスのためにヒントが得られないか探ってみようと思います。

クラウドならIIJ GIO(ジオ)- IIJの高品質クラウドサービス

※サービスの数が多いので、AWSでほぼ同等に提供しているサービスは省略。

※2013.10.25 23:45 一部訂正(HaaS、SaaSなどのサービスモデルに関する記述を見直し。3はすでにクラスメソッドさんが使ってるらしい。)

 

1.  VMWare環境の貸出しサービス

IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

VMWareの仮想環境をそのまま借りられるサービス。

AWSではハイパーバイザレベルのリソースは見えないので、もっと下層レイヤーから制御したい需要には答えられているかもしれない。

 

ただ、実際にこのサービスを利用する際はOSを載せて利用することになるので、ポイントは「V2Vによる既存環境からの移行がしやすそう」という点。

AWS にも VM Import/Export というV2Vのサービスがありますが、そもそもAWSの仮想環境が Xen の拡張であり、移行元の仮想環境がほとんど VMWare であるという点で、実際にV2V移行する際に色々アレで正直評判がいいとは言えないです。

VM Import (仮想サーバーイメージのインポートとエクスポート機能)| アマゾン ウェブ サービス(AWS 日本語)

 

結論:AWS で V2V が 気軽に・手軽に・確実に できるようになるといいな。

 

2.  メールサーバーのセキュリティ運用サービス

ホスティングパッケージサービスの中に、postfixとDovecot で構成されたメールサーバーをセキュアに運用してくれるセキュアメールプランというのがあります。ウィルススキャンと迷惑メールフィルタということなので、AWS なら EC2 上に構築してServer Protectを入れれば同様のプラットフォームはできそうです。 ただ現状から言うと、Google Apps でたいていは済みそうなので、構築する前にいったん落ち着いて考えてみたほうがよさそうです。メールサーバーの運用って大変ですからね。

IIJ GIOホスティングパッケージサービス | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

セキュアメールプラン - IIJ GIO

 

あと、トランザクションメールやマーケティング用のメールなど大量配信をしたいなら当然 SES や、サービスとして提供される SendGrid やその他あまたのサービスを利用すればよいでしょう。

 

結論:メールサーバーはAWS上に手組みでいくらでも構築できます(SIパートナーがやってます)。が、運用がしんどいのでまずはすでにあるサービスに移行できないか検討した方がいいでしょう。

 

3. ケータイWebページ変換

モバイルWebプラン - IIJ GIO

スマホサイトをガラケーサイトに変換できる roundabout という製品を使って、ガラケーでもスマホサイトがキレイに見られるようになるらしい。

スマートフォン(スマホ)サイトを自動変換で携帯対応|ラウンドアバウト

先日開催されて自分もプレゼンしに行った ad:tech Tokyo 2013 で同社の「PCサイトをスマホサイトに変換」できるジーンコードという製品については話を聞いてきて、お客様の需要があれば使ってみたいなと思ってたとこ。

PCサイトをスマートフォン(スマホ)サイトに変換して最適化|ジーンコード

 

結論:ジーンコードやラウンドアバウトを AWS 上で SaaS として提供するパートナーがいてもいいはず。(追記:クラスメソッドさんはすでに使ってるらしい)

 

4.  IBM の UNIX 環境の貸出しサービス

IIJ GIO Power-iサービス | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

IBM のいわゆるAS/400系のUNIX機(Power Systemsという名称らしい)をレンタルできるサービス。

AWS のインフラは Intel の CPUベースで、POWER系のインフラじゃないので、AWSでこれをIaaSとして(要はAMIから起動できる形式で)IBM機を提供するなら、IBMと協力して現行とは別の、POWER系のサービス基盤も作らないといけない、、、ありえない!

一部にIBM機を使い、その他をAWSで、という話であれば、コロケーションという手段はあるけど、そうなると自社でH/Wを調達しないといけなくなるので HaaS のメリットを享受できなくなってしまう。

 

結論:IBM機を AWS で使う方法はない。

 

5. ソーシャルゲーム向けのクラウド

IIJ GIOソーシャルアプリ支援ソリューション | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

ソーシャルゲーム向けと言ってるが、いわゆる性能要件に厳しいWebシステム向けのクラウド。AWSも別にゲームに特化したインフラとは謳ってませんが、ソーシャルゲームのインフラに使われてます。というか大半のソーシャルゲームがAWSじゃないかと思います。

なのでゲーム向けかどうかはいったん忘れて、このサービスの中で注目したポイントは、

  1. ioDrive(PCIe直結の不揮発性メモリストレージ) を載せた専用サーバーが借りられることでI/Oバウンドな処理にパフォーマンスが出せる
  2. 転送料金を気にしなくてよい

2の転送料金について、AWSについては従量課金ですが、たとえば cloudpack ではプラン料金(AWS利用料、運用保守込み)で100GB×EC2の台数まで転送料がインクルードされており、多くの場合それで納まるために固定料金とみなせる状態にしています。

ただ、転送料金がもっと安くなれば、インクルードできる転送料がもっと増やせて(たとえば10TBや100TBでも)、売りやすくなることに間違いはないです。

 

また、このサービスにおける環境構築や運用監視は、IIJのパートナーにフルアウトソースできるようになってるみたいです。AWS でもパートナーに cloudpack のような MSP がいるのでこの点は差異なし。

またIIJは、ゲーム向けには外部のMSPと連携していますが、従来のデータセンターのオペレーションルームで行っていたようなMSPは自社でも行っているようです。サービス内容によって棲み分けてるのかな?

IIJ GIO統合運用管理サービス | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

 

結論:エフェメラルディスクにioDriveオプションが欲しい。転送料金をもっと安くしてほしい。

 

6. 中国内でのサービス展開

IIJ GIO CHINAサービス | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

中国内でビジネス展開する日経企業向けのサービス。グレートファイアウォールの観点から、中国内のビジネスは中国内のiDCで展開したいという需要に答えているようです。南北接続問題などもあるし、噂に聞く「誰でもセンター内に入れちゃう」ゆるさを自分で解決するのも面倒なので事業者にまかせたいというユーザーが使ってるのではないか。

 

結論:中国リージョンを開設してほしい。

 

7. グループウェア SaaS

IIJ GIOサイボウズ ガルーン SaaS | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

これもAWSは直接やってないけど、ChatWork や Backlog とかがすでにありますね。

この業務利用の情報系システム(汎用情報系というみたい)分野は前のエントリーにも書いたとおり今後最もクラウドに置き換えが進む速度が速いと言われている分野。

AWS が自社サービスとして展開しなくても、どんどん AWSユーザーがサービスを拡大していくと思われます。

 

結論:AWSを使ったグループウェアSaaSがすでにあるけど、市場の伸びが期待されてるので今からベンチャーとして参入するのも面白いかもね。

 

8.  POSサービス SaaS

IIJ GIO POSサービス | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

AWSが業務ソリューションをはじめるとは思えないのでこういうのもパートナーがやるといいと思います。

ただしこの中でオプションとして使われてる、IIJモバイルによるモバイル端末の通信環境という点、AWSを使う場合もモバイル端末でVPNサービスを提供する方法が色々あると思いますがあまり詳しくないので、ちょっと今後調べておこうかなと思います。

先日、植木さんのエントリーで Sophos を使ったモバイル環境での VPN 接続というのがありましたが、もう少しサービスレベルの高いヤツないかな、と。

IIJモバイル - ビジネス専用高速データ通信サービス

サービス概要 ULTINA VPN Options:モバイルゲートウェイ:SoftBankタイプ|ソフトバンクテレコム 法人のお客様向けサービス|SoftBank

 

あとモバイルアプリの実装をしようとすると AWS を直接使うより、モバイル BaaS を使うと便利な場面も多分にありますね。

B2Cモバイル開発のいまとこれから #forcedotcomjp // Speaker Deck

 

モバイルに限らず、SaaS を一切使わず IaaS のみで運用してるインフラのほうが少ないと思う(みんな cloudability や New Relic 使ってるし)ので、便利なサービスは積極的に使っていきましょうってことで。

 

結論:業務ソリューションはAWSパートナーのお仕事、パートナーごとにソリューションをどんどん打ち出していけばよいと思う。あと、MBaaS はすでにあるしこれからもどんどん出てくるので活用したいと思う。

 

9.  仮想デスクトップサービス

IIJ GIO仮想デスクトップサービス | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

これはたしかに需要が多そうだし、今までたくさんの「血」が流れて少しずつよくなってきた仮想環境の最後の砦。ブートストームで朝イチ全く仕事にならないとか、プロファイルの管理作業で煩雑になりすぎて頭が爆発しそうとか、導入コストがめちゃくちゃ高かった割に評判は決してよくなかったことが多かったと思います。リソースが潤沢なクラウドで、かつマネージしやすい環境までセットになっていれば、こういった機能・非機能要件はクリアできそうです。

あとは、現状のファットPCと同程度以下のコストで運用できるかどうかという部分でしょうか。

 

AWS では VDI ソリューションは提供されていませんが、Windows Server on EC2 をクライアントPCとして使うというのもアリでしょう。、、、といってもさすがに機能的に豪華すぎるのと、元々の設定が相当ミニマムなので、だいぶ作り込む必要もあります。おまけに SPLA を使って Windows Server 2008 R2 の Aero Glass を有効にしたくても、スケスケにはならない。

 

さらに Facebook経由で、Windows Azure のエバンジェリストの岩出さんが dxdiag でDirectXの機能が有効じゃないと、て教えてくれました。やっぱダメでした。

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ついでに言うと、US-East の GPU インスタンスでもやってみたけどダメでした。

 

結論:VDI ソリューションは多分需要があるけどコスト次第。あと、スケスケにはならない。あと、SPLA 契約のとき思ったけど Microsoft のライセンス分かりづらい。

 

10.  Microsoft 環境の移行ソリューション

IIJ GIO Cloud Migration Factory for Windows | IIJクラウドサービス - IIJ GIO

オンプレ側のバージョンが相当古い場合にそのまま移行できるのか、までは書いてませんが、AWS であれば Windows Server 2008 か 2012 であれば公式のAMIを使って移行させることができますね。

結論:AWS でもすでにたくさんのSIベンダーがやってる。

その他の応用サービスについてもAWSパートナーで対応しています。

 

まとめ

AWS のサービスの進化はこれからもまだまだあると思う。

パートナーはサービスだけでなく、業務ソリューションとして色々打ち出すと売りやすいと思う。

IT全体の市場規模の中で、クラウドはまだそんなに比率が高くないので、さまざまなソリューションが展開されることで、もっとクラウド業界全体のパイが広くなるはず。