吉田真吾(@yoshidashingo)です。フリーランスでたくましくやってます。
本日は後ほどこちらにエンジニア代表として参加予定です。
そこでこんなお題を事前にいただいてます。
- Web業界に特有の人材不足の原因とは
- 人材不足はいつまで続くのか
- どうすれば解決するのか、あるいは取り組んでること
頭の整理も兼ねて一通り自分の考えを記載しておきたいかなと思います。統計などとの突き合わせはできてませんので、経験則に基づく仮説レベルになってる点はご了承ください。
Web業界に特有の人材不足の原因とは
1. Webに対するニーズに人材供給が追いついてないのではないか説
今回のイベントのお題ではIT業界の中でもとくにWeb業界にフォーカスしています。ITにおけるWeb業界というのは生まれてここ20年くらいの業界です。その前にはそもそもWeb上でのマネタイズがされてなかった(広告やサービスなど)し、Yahoo!BBやiPhoneの登場などもきっかけにして爆発的に消費者が集まるようになった世界です。
その旺盛な需要に対するWebを活用したマネタイズのアイデアはどんどん増加するのですが、それを具体的にシステムとして開発できる人数が相対的に増加していないのかもしれません。比較的昔からあるGoogleなどのサービスでさえスマホからの利用者数が対昨年比20%近くという状況なのですが、さすがに1つの業界に年率2桁で人材が流入するというのは想像できないですね。
2. Webシステムを供給するビジネススケールが間に合ってないんじゃないか説
日本において2〜3年でゼロからユニコーン(>$1B)企業になったなんてのは聞いたことがないですし(知らないだけであるのかな?)、お茶の間でロックスターエンジニアを見る機会というのは今のところないですね。
いないことはないのかもしれないけど、エンジニアに関しては朴訥で清貧なほうがウケそうという雰囲気もあってあまり目立たないのかな。これについては先人たちはもうちょっと社会的ステータスやワークライフバランスについてもうちょっと憧れられるような広報をして欲しいですね。
3. 一部のゲーム屋さんが抱えちゃってる説
2011年頃によく聞かれた「入社支度金」。こういったものが用意できる会社さんに人材が偏ってる説。市場原理が適切に働いていること自体はよいことではないかなと思います。
4. Web業界の稼ぎ方が偏ってる説
最近実際にあった話ですが、とあるエンタープライズな会社さんのシステム刷新で、基幹系や情報系システムのデザインをレビューしましたが、まるでワークステーションの画面のようで、配色もびっくりするくらいの「Web 1.0」、どこをどう押したらどう動くのか全く想像のつかない画面だったので、これはいかんと。僕たちのチームのUI/UX担当メンバーがガラッと変えたプロタイプを作って見せたところ、お客さん先でスタンディングオベーションが起きたということがありました。
業務システムにおいてももうWeb技術が標準的に使われているのにもかかわらず、最も得意とする人や会社がそれを担当してないってことはないでしょうか。よくあるスーツ対ギークみたいのはそろそろ卒業して、エンタープライズ業界とWeb業界が手と手を携えて「餅は餅屋」を実践してITのモダン化に向かうという姿勢が大事だと思います。そうすればエンジニアの単価も高く設定しやすくなるでしょう。たとえば100万/MMもらえばエンジニアに50万くらいは払えますよね。
また、内製化の文脈でちょっと話をすると、僕はすべてを内製化できるとは思わないんですね。システムをゼロから作ったり基盤刷新を行う場合にはそれなりの大きさのプロジェクトをやらざるを得ないと思うので。重要なのは、そこから「内製化への巻き取り方」だと思うんです。
現在相談いただいてるとある会社さんで、一度アウトソースで作ったものを巻き取れずにいてビジネス側が求めるスピードにまで上がらないというジレンマを抱えているところもあります。
日経電子版さんのAWS移行をやったときは、彼らの巻き取り方が非常に上手くて、後半ほとんど手離れできたという成功パターンもあるので、巻き取り方はとても大事です。
5. そもそも大きなエンジニアのパイをSIerが抱えちゃってる説
某20万人月と言われるプロジェクトがありますが、こういうものに人が取られてないですかね?しかもそういった案件だと、エンジニアの主体性とか殺されてしまい、生産性が低くなる傾向があるでしょうから、見積もり以上に人を突っ込む必要がでてきたりもして、技術者不足に拍車をかけてるんじゃないでしょうか。調査結果からも、人を出してる中小下請けのほうが技術者不足と感じる傾向が強いようですし。
あと、最近だとオフショアの中心が中国からベトナムに移行してますよね。中国のちゃんとした会社はもうかなり高くなりましたから。
人材不足はいつまで続くのか
上記のような状況なので、マクロ視点では恒常的に人材不足ではあるのではないかと思います。ただ、フリーランスや副業をしたいというエンジニアはまだまだいると思いますよ。というかそれが私が取り組んでる部分なのですが。
どうすれば解決するのか、あるいは取り組んでること
最近のお仕事
- クラウドを使ったインフラ設計・構築・PoC、DevOpsツール導入・定着化、UI/UX設計、アプリケーションフレームワークのモダン化など
- 内製化や採用の相談
- ユーザーが主体的に開発・運用ワークフローを整備する(成果物の納品を目指せばよい会社がCI環境を整備するインセンティブはないんで)
- Webで会社名調べてコーポレートサイトしか出てこない会社にエンジニアがくるわけないのでちゃんと発信するところからやる
最近取り組んでること
- フリーランス、副業OKなエンジニアによる技術支援チーム作り
- 完全なT&Mで合理的に使っていただく。都度軽く見積もりはするが、最終的な工数の使用責任はお客様という形で提供している。
- 副業OKなエンジニアにも仕事を頼んでおり、私の方で仕事内容の交通整理をしたうえでタスクをお願いしている。
- サーバーの移行作業やインフラのコード化など。
- 直近の課題としては、本業にオーバーコミット気味な時期は交通整理自体がしにくいという点。
- 世界中のギルドとのコラボレーション ※これから本格化
- ちょっとドバイあたり行ってくる
提案的なこと
自社でWebサービスをやってるとこ向け
- サービスをSaaS化しよう
- 個別カスタマイズなどをすることでスケールしないビジネスになってしまう。少ない人数で大きなチャリンチャリンビジネスにする。
- SaaS、PaaSを活用しよう
- エンジニアが足りないなら、車輪の再発明に時間を使わずに、SaaSやPaaSを活用して出来合いのものでマッシュアップすればいいじゃない。Salesforce、AWS(の中でもよりマネージドサービスを使う)、Google Apps、GitHub、CircleCI、Treasure Data、Mackerel、DataDog、PagerDuty、Slack、Okta、etc... ツールはなんでも揃ってる。
制作会社向け
- デザインファーム化しよう
- Webの下請けに留まらず、Web技術を使ってどういう価値を提供するのか、コンサルテーションやワークスタイルのリデザイン、ツールの選定や、PoC、プロトタイピングして、など。
ユーザー企業向け
- デザインファームを使ったり、合理的な内容で技術支援できる人を内外問わず活用しましょう。
- 内製化しましょう。そしてそれらを恒常的に発信していきましょう。